はじめに

昨今、セキュリティは単なるコストや義務ではなく、サービス品質の一部として評価されるようになっています。顧客は「このサービスは安全なのか」という観点で利用可否を決め、安心できるサービスには対価を惜しまない傾向さえあります。本記事では、企業がセキュリティを自社サービスの品質要素として高め、信頼獲得や競争優位に繋げる考え方を述べます。

安全・安心がブランド価値を高める

信頼は最高のサービス品質

どんなに便利で高機能なサービスでも、情報漏洩や不正利用の不安があれば顧客満足は得られません。逆に「この会社ならデータを安心して預けられる」という信頼感は、サービスの付加価値となります。調査でも「72%の消費者がプライバシー懸念でサービス利用を停止する」とされ、「57%は信頼できるブランドに多く払う用意がある」と言います。これは、セキュリティ=安心が購買意欲とロイヤルティに直結することを示しています。

事例

AppleはiPhoneで「プライバシーは基本的人権」と広告し、セキュリティ・プライバシーを前面に出しています。結果、ユーザーはApple製品を安心安全と評価し、ブランド忠誠度が高まっています。このようにセキュリティをブランドメッセージに組み込む企業が増えています。

セキュリティを品質に組み込む方法

1. 製品・サービス設計段階からセキュアに

セキュアバイデザインの思想で、最初からセキュリティ対策を盛り込んだサービス開発を行います。例えば、クラウドサービスなら通信暗号化やWAFを標準搭載、アプリなら厳格な権限管理と安全なコーディング、IoT機器なら出荷時に個別強固パスワード設定済み等です。これにより、顧客は何も設定しなくともデフォルトで安全な利用ができます。

2. 可視化と透明性

サービスのセキュリティレベルを可視化して提供することで、顧客の安心感を醸成します。例として、ウェブサイトにセキュリティ認証マーク(ISO27001取得、SSL暗号化あり等)を掲示する、管理画面でアカウントの安全度(パスワード強度・ログイン履歴)を示すといった工夫です。また、セキュリティに関する問い合わせ窓口を用意し、顧客からの質問に答える透明性も大切です。

3. プライバシーとユーザビリティの両立

セキュリティ強化がユーザーの利便性を損なわないよう工夫します。例えば二要素認証はセキュリティを上げますが面倒にもなります。そこで生体認証等で手間を減らす、ログイン通知や異常検知連絡でユーザー自身にもコントロール感を与える、などUI/UXデザインと組み合わせます。セキュリティ=不便のイメージを払拭し、「安心で使いやすい」サービスを目指します。

4. 迅速なインシデント対応

万一事故が起きた時の対応も品質の一部です。情報開示の速さ、被害者支援の充実、原因究明と再発防止策の提示など、誠実な対応は顧客からの信頼を守ります。逆に対応を誤ればブランド失墜は避けられません。インシデントレスポンス体制もサービス品質保証のプロセスと捉え、予め計画しておくべきです。

5. 継続的な強化発信

サービス運営中も継続的にセキュリティを強化し、その内容をユーザーに発信します(ブログやニュースで「○○のセキュリティ機能をアップデートしました」等)。これにより、進化し続ける安心を訴求できます。Cisco調査では、ユーザーの79%がデータ保護のために時間やお金を費やす意向があるとされ、企業側が積極的に取り組む姿勢を示すことで、ユーザーからの共感と支持を得られます。

サービス品質への昇華による効果

差別化

セキュリティがセールスポイントとなり、競合サービスと差別化できます。例えばメッセンジャーアプリのSignalは「完全プライバシー」を売りにし、WhatsApp等からユーザーを獲得しました。安全性そのものが選ばれる理由になり得る時代です。

顧客維持

信頼を築いた顧客は簡単には離れません。多少価格が高くても、安全と信じるブランドを選び続けます。セキュリティを品質要素として維持向上し続けることが、長期的なカスタマーロイヤリティを生むでしょう。

新規顧客獲得

セキュリティ認証取得やトラストマーク表示などは、新規顧客への安心感を与えます。BtoB取引でも「御社はISOやSOC2を取得していますか?」と問われることが多く、持っていれば商談がスムーズになる(持っていなければ機会損失)といった具合です。信頼の証がビジネスチャンスに直結します。

ブランド価値向上

安心安全な企業という評判は、企業ブランド全体の評価を底上げします。株主や投資家もガバナンスの一環としてサイバーセキュリティに注目するようになっており(Day15参照)、サービス品質=企業品質として高評価につながります。

まとめ

セキュリティをサービス品質に昇華させるとは、「安全・安心」をサービスの一部として提供することです。ただ守りを固めるだけでなく、顧客体験の向上につなげる発想が重要です。幸い多くの顧客はそれを望んでおり、先進企業はそれを巧みにブランド戦略に取り入れています。

経営層は、セキュリティへの投資を顧客満足度向上策と捉え、積極的に推進すべきです。の調査が示すように、信頼できるブランドは支持され、ビジネスの持続可能性が高まります。「顧客の信頼を得ること」が何よりの競争力であり、セキュリティはその信頼を得る核となる要素なのです。

セキュリティを単なるコストセンターではなく、バリューセンターへ。安全性という品質を武器に、顧客の心を掴み、市場で選ばれる存在となりましょう。