はじめに

多くの企業が未だにレガシーシステム(古い基幹系やレガシーOSなど)を抱えています。これらはビジネスの土台を支える一方、脆弱性の温床となり、重大なセキュリティリスクをもたらします。経営層にとって、レガシーシステムの脆弱性管理は技術的課題であると同時に戦略的決断の課題でもあります。ここでは、なぜレガシーが脆弱なのか、その対応策と経営判断について述べます。

レガシーシステムが抱えるリスク

1. パッチ未適用

古いシステムほどメーカーサポートが終了し、セキュリティ更新プログラム(パッチ)が提供されなくなります。Windows 7や古いLinux等では既知の脆弱性が放置され、攻撃者から狙い撃ちにされます。例: 2017年のWannaCryランサムウェアはサポート切れWindowsに感染が拡大し、世界的被害を出しました。

2. 設計上の脆弱性

昔のアプリケーションやプロトコル(例: SMBv1、古いSSH)には今日の視点で見ると脆弱な設計が多数あります。不十分な暗号化、入力検証の欠如、ハードコーディングされたパスワードなど、モダンな基準に合わず攻撃に弱いケースが多いです。

3. 継ぎ接ぎによる複雑化

レガシーは度重なる改修でブラックボックス化し、現担当者も全貌を把握できないことがあります。このため新たな脆弱性発見に対応が遅れ、脆弱性管理の抜け漏れが発生しがちです。

4. 寿命部品やソフトの枯渇

古いハードウェアでは保守部品が入手困難になり、障害でシステムダウンすると長期停止の恐れ。古いソフトもスキルある技術者が減少し、いざ問題発生時に対処不能の事態が起こり得ます。

5. 外部連携の穴

DX推進でレガシーと新システムを連携する際、インターフェース部分が脆弱性になることも。例えばレガシーデータをAPI公開したら認証が甘かった等、新旧混在環境のセキュリティは難しいポイントです。

対応策と経営判断

1. 現状棚卸しと脆弱性診断

まず、全レガシーシステムの洗い出し、脆弱性情報(CVEなど)のチェックを行います。IPAの10大脅威なども参考に、何がどれだけ危険かリスク評価します。その上で、優先順位を付けて対策方針を決めます。

2. アップグレード/更新

可能なものは最新バージョンや代替システムに更新するのが最善です。経営判断として老朽資産への投資を決断すべき局面です。放置して事故れば賠償含め莫大な損失です。費用対効果(ROI)がマイナスに見えても、リスク低減額を考慮すれば交換投資は正当化できます。

3. 継続利用の守り

すぐ更新困難なものは、周囲を守る方策を取ります。

  • ネットワーク分離: レガシーをネットから切り離し、LAN内でもセグメント分割して被害範囲を限定。
  • 仮想パッチ: WAFやIPSで脆弱性攻撃をブロックする。
  • アクセス制御: 接続許可IPを限定、不要なサービス無効化などで攻撃面を減らす。
  • 監視強化: レガシー専用のログ監視・振る舞い監視を行い、兆候を早期検知する。

4. デュアル運用

新旧並行稼働し、新システムが安定稼働するまでバックアップとしてレガシーを残すデュアル運用も選択肢です。ただその間も二重の管理コストがかかるため、移行計画を明示しつつ合理的な期間に留めます。

5. 緊急時対応計画

レガシーがサイバー攻撃受けた場合のBCPを策定します。手動運用手順や、最悪停止した場合の代替フローを平時に決めておきます。経営層はこのプランを承認し、訓練しておくべきです。

経営層への提言

投資の先送りは危険

レガシー刷新は多額の投資が必要で尻込みしがちですが、技術的負債は雪だるま式に膨らみます。世界的事件を見ても、先送りしたツケが一度に噴出し企業存続を脅かすケースがあります。経営者は「いつかは更新が必須」と覚悟を決め、最適なタイミングを見極めるべきです。その判断が遅すぎれば手遅れになります。

レガシーリスクの見える化

技術者任せにせず、経営層自らがレガシー問題を把握する必要があります。例えば、各レガシーシステムごとに「重大脆弱性X件放置」「サポート期限XX年終了」といった情報を一覧化し、リスク値で色分けするなど見える化して、取締役会で議論材料にします。これにより経営陣の共通認識が生まれ、投資判断もしやすくなります。

文化の転換

「動いているなら触らないでおこう」という文化から「攻撃者は動いているものを狙う」へ意識を改めます。セキュリティはプロアクティブであるべきで、綻びを放置しない組織文化を醸成します。そのために、定期的な技術債務レビュー会議や老朽資産刷新のロードマップ策定を経営課題として設定します。

まとめ

レガシーシステムとそこに潜む脆弱性は、企業にとって抱えた時限爆弾のようなものです。経営層はこのリスクを正面から捉え、計画的な刷新と防御策という両面で対策を進める必要があります。幸い、一度刷新すれば長期的な運用コストやリスクは劇的に下がり、DXの基盤も整います。

難しいのは決断のタイミングですが、セキュリティインシデントのリスク増大や更新費用とのバランスを見ながら、最悪を回避するための先行投資と割り切ることが重要です。レガシーの呪縛から解き放たれ、強固で柔軟なIT基盤を築くことが、企業の持続的成長を支えると信じて、勇気を持って行動しましょう。