受付のパソコンを、午前と午後の担当者が交代で使っている。

倉庫に置いた端末を、入出庫を担当する従業員全員で使っている。

工場の製造記録用パソコンへ、「factory」という一つのアカウントでログインしている。

店舗の予約管理画面を、スタッフ全員が同じメールアドレスとパスワードで利用している。

一台のパソコンを複数人で使うこと自体は、直ちに問題ではありません。業務の内容や予算、設置場所によっては、利用者一人に一台ずつ端末を用意する必要がない場合もあります。

しかし、物理的な端末を共有することと、同じID・パスワードを共有することは、分けて考えなければなりません。

端末を共用しても、利用者を識別するアカウントは個人別にできます。

反対に、全員が一つの共有IDを使っていると、事故が起きた際に、誰が操作したのか、誰がファイルを開いたのか、誰が設定を変更したのかを確認できなくなります。

以前の記事では、退職者・異動者・契約終了者のアカウントを削除し忘れないための棚卸しを解説しました。今回は、現在在籍している複数の従業員が一台のパソコンを使う場合に、端末は共有しながら、利用者のID、ブラウザ、クラウドのログイン状態を分離する方法を整理します。

「一台のパソコン」と「一つのアカウント」は同じではない

共用PCには、複数の管理単位があります。

管理単位分離する目的
物理端末受付PC、倉庫PC、工場端末機器、設置場所、保守状況を管理する
OSアカウントWindowsへのサインイン利用者ごとのデータ、設定、操作を分ける
ブラウザプロファイルChrome、Microsoft Edge履歴、ブックマーク、保存パスワード等を分ける
業務サービスのアカウントメール、会計、顧客管理、予約システム権限と操作履歴を個人別に管理する
管理者アカウントWindows管理者、クラウド管理者設定変更や利用者追加を限定する

例えば、一台の受付パソコンに、受付担当者Aと受付担当者BのWindowsアカウントを作成できます。

Aが勤務を終えるとWindowsからサインアウトし、Bは自分のWindowsアカウントへサインインします。パソコンは同じでも、デスクトップ、ダウンロードフォルダ、ブラウザ設定などを分離できます。

そのうえで、メールや予約システムにもAとBの個人別アカウントを用意すれば、サービス側のログでも、誰が操作したのかを確認しやすくなります。

共用PCの基本原則は、次の一文です。

端末は共有しても、利用者の身元を表すアカウントは共有しない。

個人情報保護法に「共有ID禁止」と書かれているのか

個人情報保護委員会のQ&Aは、「共有IDを使用してはならない」という表現で一律に禁止しているわけではありません。

一方で、個人データを扱う情報システムの安全管理措置として、識別に基づくアクセス制御、権限の最小化、利用時間等の制限、権限管理の定期的な確認などを例示しています。また、システムや個人データへのアクセス状況、操作内容、成功・失敗の記録を監視し、不正が疑われる異常な記録を定期的に確認する方法も示しています。

このため、共有IDを使用しただけで直ちに個人情報保護法違反になると断定することはできません。

しかし、全員が同じIDを使うと、次の説明が難しくなります。

  • アクセスした本人をどのように識別したか
  • その人に必要な権限だけを付与したか
  • 退職・異動時に本人の権限だけを停止したか
  • 異常な操作を行った人を特定できるか
  • 操作記録と勤務者を正確に照合できるか

したがって、個人データを扱う共用端末では、共有IDより個人別IDを採用する方が、アクセス制御と記録管理を実施・説明しやすいと考えられます。

IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版」も、個人事業主や小規模事業者を含む中小企業が、経営者の方針と実務上の手順を組み合わせ、段階的に対策を進める構成となっています。

共有IDで起きる六つの問題

1 操作した人を特定できない

全員が「受付」「倉庫」「店舗」などの共有IDを使うと、システムのログには同じ利用者名しか残りません。

顧客情報が変更された、注文が削除された、請求額が書き換えられたという場合でも、ログだけでは実際の操作者を特定できないことがあります。

勤務表や防犯カメラから推測できる場合もありますが、それは個人別アカウントによる記録より確実性が低く、調査にも時間がかかります。

2 前の利用者のログイン状態が残る

前の担当者がメール、クラウドストレージ、チャット、顧客管理システムからログアウトせずに交代すると、次の利用者がそのまま操作できることがあります。

ブラウザを閉じただけでは、クラウドサービスのセッションが終了しない場合があります。

次の利用者が意図せず前任者のメールを送信したり、別人名義で承認したりする可能性もあります。

3 保存したパスワードや入力情報が見える

共通のWindowsアカウントやブラウザプロファイルを使うと、次の情報も共有されやすくなります。

  • 保存されたパスワード
  • 自動入力に登録された氏名・住所・電話番号
  • 閲覧履歴
  • ダウンロードしたファイル
  • 最近開いたファイル
  • ブックマーク
  • Cookieやログインセッション
  • コピーした文章や認証情報
  • 印刷履歴や一時保存したPDF

業務システムのアカウントだけを個人別にしても、OSやブラウザが共通のままでは、端末内に残った情報を別の利用者が閲覧できる場合があります。

4 必要以上の権限を全員へ与えてしまう

一つの共有IDで、閲覧、登録、承認、削除、設定変更をすべて行うと、利用者ごとに権限を分けられません。

本来は閲覧だけでよい担当者にも、削除や承認ができる権限を与えることになります。

個人情報保護委員会のQ&Aは、識別に基づくアクセス制御と、付与する権限の最小化を対策例として挙げています。共有IDは、こうした個人単位の権限管理を難しくします。

5 退職・異動時に個人だけを止められない

共有IDのパスワードを知っている人が退職した場合、その人だけを利用停止にできません。

共有パスワードを変更し、現在の利用者全員へ新しいパスワードを伝え直す必要があります。

変更を忘れれば、退職者が引き続きログインできる可能性があります。変更しても、新しいパスワードをメールや紙で一斉配布すれば、再び管理できない状態になります。

6 MFAやパスキーまで共有することになる

一つの共有アカウントへ多要素認証を設定すると、認証に使うスマートフォン、認証アプリ、セキュリティキーなども複数人で共用する運用になりがちです。

その結果、認証コードをチャットへ貼り付ける、共通のスマートフォンを机上に置く、複数人が同じPINを知るといった運用が生まれます。

Windows Hello for Businessでは、認証鍵が端末に結び付き、利用者のPINまたは生体認証で鍵を使用します。PINや秘密鍵そのものは認証先へ送信されません。こうした仕組みを個人別に利用するには、Windowsへのサインイン自体も利用者ごとに分ける必要があります。

Chrome・Edgeのプロファイルだけでは利用者を守れない

ChromeやMicrosoft Edgeには、複数のプロファイルを作る機能があります。

プロファイルを分けると、履歴、ブックマーク、パスワード、拡張機能などを別々に管理できます。仕事用と個人用を分ける用途や、一人の利用者が複数の業務アカウントを使い分ける用途には便利です。

しかし、ブラウザプロファイルは、異なる従業員を強固に隔離するためのOSアカウントではありません。

Googleは、同じ端末を利用できる人は、その端末上の別のChromeプロファイルへ切り替えられ、訪問したウェブサイト等を知られる可能性があると説明しています。信頼できる人とだけ端末を共有するよう注意しています。

Microsoftも、Edgeではパスワードを求められずに既存のプロファイルへ切り替えられ、端末を使える人が現在のプロファイル所有者の許可なく別のプロファイルを作成できると説明しています。

したがって、次の構成は十分ではありません。

共通のWindowsアカウントへ全員でサインインし、従業員ごとにChromeやEdgeのプロファイルだけを作る。

この構成では、別の利用者がブラウザ上でプロファイルを切り替えられる可能性があります。

異なる従業員のデータを分ける場合は、まずWindows等のOSアカウントを個人別にします。そのうえで、各利用者のWindowsアカウント内に、会社が指定したブラウザプロファイルを設定します。

ゲストモードやシークレットモードも個人別IDの代わりではない

Chromeのゲストモードでは、終了後に端末上の閲覧履歴等が削除されます。Googleは、他人の端末や公共のパソコンでの一時利用を用途として挙げる一方、機密性の高いウェブサイトへログインする場合は、信頼できる端末を使うよう案内しています。

Microsoft Edgeのゲストモードも一時的なプロファイルで、すべてのゲストウィンドウを閉じると、履歴、パスワード、フォーム入力等が保持されません。ただし、ダウンロードしたファイルそのものは端末へ残り、ダウンロード履歴だけが削除されます。

ゲストモードやシークレットモードには、次の限界があります。

  • 利用者本人を識別する仕組みではない
  • 業務サービス側の共有ID問題は解消しない
  • ダウンロードファイルが端末へ残る場合がある
  • 印刷物やコピーした情報は自動的に回収されない
  • 端末や社内ネットワークの管理者から見えなくなる機能ではない
  • マルウェアやキーロガーから認証情報を守る機能ではない
  • 利用中の画面を次の人が見れば、情報は閲覧される

ゲストモードは、公開情報の検索、来訪者向け案内、短時間の一時利用には使えます。

一方、顧客情報、会計、給与、メール、診療情報、設計情報などを扱う業務では、ゲストモードを個人別アカウントの代わりに使用すべきではありません。

共用端末を四つの運用方式に分ける

すべての共用端末を、同じ設定にする必要はありません。

利用目的に応じて、次の四つへ分類します。

運用方式主な用途推奨するアカウント構成
個人サインイン型受付、事務、営業、会計個人別Windowsアカウント+個人別業務アカウント
現場共用型倉庫、工場、検査、作業場個人別サインイン+利用可能アプリの制限
公開キオスク型来訪者受付、案内、検索権限を限定したローカル標準アカウント
機器・表示専用型デジタルサイネージ、監視表示、専用設備人のアカウントと分離した専用アカウント

個人サインイン型

従業員がメール、クラウド、顧客情報などを扱う端末です。

端末は共用しても、Windowsと業務サービスには個人別にサインインします。

前の利用者がサインアウトした後、次の利用者が自分のアカウントで利用します。

現場共用型

倉庫や工場などで、限られた業務アプリだけを使う端末です。

利用者は個人別に識別しながら、OS設定、ウェブ閲覧、ソフトウェア導入などを制限します。

社員証、ICカード、個人別PIN、SSOなどで、短時間に利用者を切り替えられる仕組みがあると、現場の負担を抑えやすくなります。

公開キオスク型

来訪者受付や公開情報検索など、匿名利用を想定する端末です。

WindowsのAssigned Accessでは、Microsoft Edgeや指定したアプリだけを実行するキオスク環境や、定義したアプリだけを使える制限付き環境を構成できます。Microsoftは、公開環境のキオスクには、ローカルの標準ユーザーなど、最小限の権限を持つアカウントを使うよう案内しています。

機器・表示専用型

設備監視、サイネージ、データ収集など、人の業務アカウントを必要としない端末です。

専用アカウントを使う場合も、従業員がメールやクラウドへ入るための共有IDとして流用してはいけません。

許可したアプリだけを実行し、対話的なログイン、ウェブ閲覧、ファイル持ち出しなどを制限します。

業務アプリで本人認証が必要なら汎用アカウントを使わない

キオスクや制限付き端末を設定する際には、「OSへ自動サインインさせること」と、「業務アプリを共有IDで使うこと」を混同しないようにします。

例えば、倉庫端末のWindowsは専用アカウントで起動し、在庫管理アプリを自動で表示させる構成が考えられます。

その場合でも、在庫の変更や出庫承認を行う時点で、従業員が個人別ID、社員証、ICカード等で本人認証できれば、誰が処理したかを記録できます。

Microsoftも、Assigned Accessで使用するアプリが利用者認証を必要とする場合には、ローカルまたは汎用のユーザーアカウントではなく、対象となる利用者グループを指定するよう推奨しています。

つまり、次の二段階に分ける方法があります。

  1. 端末を利用可能な状態にするための専用OSアカウント
  2. 実際の業務処理を行う従業員の個人別アカウント

ただし、業務アプリ側が個人認証に対応していない場合は、誰が使ったかを別の手段で記録しなければなりません。

WindowsのShared PCモードを利用する

Windowsには、多数の利用者が一台の端末を使う環境向けのShared PC機能があります。

Shared PCモードでは、サインアウト時、ディスク容量、一定期間の未使用などの条件に基づいて、利用者プロファイルを自動削除するよう設定できます。多数の利用者がサインインすることで、古いプロファイルが端末へ蓄積する問題を抑えられます。

例えば、次のような端末で検討できます。

  • 交代勤務者が使う現場端末
  • 一時勤務者が使う端末
  • 研修室や会議室の共用端末
  • 複数拠点を巡回する従業員用端末
  • 窓口担当者が交代で使う端末

Shared PCには、認証情報を必要とせず、利用のたびに新しいローカルアカウントを作成するGuestオプションもあります。これは一時利用には使えますが、個人を識別しなければならない業務には適しません。

Shared PCモードの機能や設定方法は、Windowsのエディション、端末管理方法、組織の構成によって異なります。

導入前に、現在のWindowsエディション、Microsoft Entra IDやActive Directoryへの参加状況、端末管理サービスの有無を確認してください。

2026年に確認したいブラウザ管理ポリシー

共用PCでは、従業員が会社の許可なく個人アカウントをブラウザへ追加しないようにすることも重要です。

Microsoft Edgeで会社アカウントだけを許可する

Microsoft Edgeには、RestrictSigninToPatternというポリシーがあります。

このポリシーでは、Edgeへのサインインを許可するアカウントを、メールアドレスのパターン等で制限できます。未設定の場合は、どのアカウントでもEdgeへサインインできます。ポリシーを有効化した後、条件に一致しない既存プロファイルはサインアウトされます。

例えば、自社の会社アカウントだけを許可し、個人のMicrosoftアカウントをEdgeプロファイルへ追加できないようにする運用が考えられます。

OSの会社アカウントとEdgeプロファイルを合わせる

NonRemovableProfileEnabledを利用すると、一定の管理条件を満たすWindows環境で、OSへのサインインアカウントと一致する職場・学校アカウントのEdgeプロファイルを作成し、利用者が削除できないようにできます。

これにより、従業員が別の会社アカウントや個人用プロファイルだけを使い続ける状態を減らせます。

ただし、このポリシーは対応するWindows構成や端末管理が前提です。すべての共用PCで同じように使えるわけではありません。

公開端末をゲスト専用にする

Microsoftが2026年5月22日に更新した公式文書では、Windows・macOS版のEdge 147以降について、BrowserGuestModeEnforcedが案内されています。

有効化すると、Edgeはゲストセッションだけを使用し、プロファイルへのサインインを禁止します。ゲストセッションはInPrivateモードで動作します。

これは、来訪者向けの公開検索端末などには有効です。

一方、個人別の操作記録が必要な会計、顧客管理、承認処理などには適しません。ゲスト専用にすると、誰が操作したかをブラウザの利用者情報から識別できないためです。

Google Chromeでブラウザへのサインインを管理する

Google Chrome Enterpriseには、ブラウザへのサインインを許可、禁止、強制するBrowserSigninポリシーがあります。

また、RestrictSigninToPatternを使うと、Chromeの主要アカウントとして設定できるGoogleアカウントを、指定したパターンへ限定できます。未設定の場合は、任意のGoogleアカウントを主要アカウントとして設定できます。

Microsoft Edge、Google Chromeともに、ポリシー名を知ることが目的ではありません。

会社として次の状態を作ることが目的です。

  • 会社が認めたアカウントだけをブラウザへ追加できる
  • 個人アカウントへ業務データを同期させない
  • 利用者の業務プロファイルを識別できる
  • 退職・異動時にプロファイルを削除できる
  • 適用中のポリシーを確認できる

手順1 共用端末を一覧にする

まず、社内で複数人が使っている端末を洗い出します。

「共用PC」という名称で管理されていなくても、実際には複数人で使っている場合があります。

  • 受付カウンターのパソコン
  • 会議室のパソコン
  • 倉庫・工場・検査室の端末
  • 店舗の予約・会計端末
  • 複合機操作用パソコン
  • 在庫確認用タブレット
  • 研修用パソコン
  • 来訪者用端末
  • 緊急時の予備パソコン
  • 社長や管理者が不在時に使う端末

共用端末台帳の記載例

項目記録内容
端末管理番号PC-001、TABLET-003など
設置場所受付、倉庫、店舗、工場等
主な用途予約受付、在庫登録、検査記録等
利用者氏名、部署、役割
OSWindows等の種類とバージョン
OSアカウント個人別、共有、ゲスト、専用
業務アカウント個人別か共有か
管理者権限誰が持っているか
ブラウザChrome、Edge等
ブラウザプロファイル会社用、個人用、ゲスト等
保存データ顧客情報、帳票、公開情報等
自動ロック有無、設定時間
ローカル保存ダウンロード、スキャン等の有無
ログ取得する記録と保存先
管理責任者端末とアカウントを確認する人
最終確認日最後に現物と設定を確認した日

台帳には、想定上の利用者だけでなく、実際に誰が使っているかを記録します。

「受付担当者が使う」と書かれていても、昼休みには別部署が利用している場合があります。

手順2 業務内容と情報の重要度を確認する

共用端末ごとに、次の質問へ答えます。

  1. 顧客情報や従業員情報を表示するか
  2. メールやチャットへアクセスするか
  3. ファイルをダウンロードするか
  4. 金額、契約、承認、削除等の操作を行うか
  5. 操作者を後から特定する必要があるか
  6. 来訪者や社外の人も端末へ触れられるか
  7. 管理者権限が必要な作業を行うか
  8. 夜間や無人時間帯にも端末が動いているか

顧客情報の閲覧、金銭処理、承認、設定変更を行う端末では、個人別アカウントを優先します。

公開情報の検索や案内だけを行う端末では、権限を限定したキオスク構成が適しています。

手順3 利用者ごとのWindowsアカウントを作る

一般的な共用業務PCでは、従業員ごとにWindowsアカウントを発行します。

基本となる構成

  • 従業員は自分のWindowsアカウントでサインインする
  • 通常の従業員アカウントは標準ユーザーとする
  • 管理者アカウントは日常業務用と分ける
  • Windows Hello等のPINや生体認証は本人ごとに登録する
  • PINや認証器を他人と共有しない
  • 異動・退職時は対象者のアカウントだけを停止する
  • 古いローカルプロファイルを決めた基準で削除する

「共用PCだから全員を管理者にする」という設定は避けてください。

ソフトウェアの導入や設定変更が必要な場合は、管理者がその都度対応するか、会社が管理する仕組みから配布します。

手順4 ブラウザは会社用プロファイルを明確にする

Windowsアカウントを分けた後、各利用者のブラウザを設定します。

設定例

  • Chrome・Edgeには会社アカウントだけを登録する
  • 個人用アカウントの追加可否を会社として決める
  • 業務用プロファイルの名称とアイコンを統一する
  • ブラウザの同期先を会社が把握する
  • 会社が許可した拡張機能だけを利用する
  • パスワード保存の方法を会社として決める
  • 個人用クラウドへブックマークやパスワードを同期させない
  • 退職時に端末上のブラウザプロファイルも削除する
  • 管理ポリシーが適用されているか確認する

個人別Windowsアカウントを使用していれば、同じ端末上でも利用者のブラウザデータを分離しやすくなります。

それでも、端末のローカル管理者は他利用者のデータへアクセスできる場合があります。管理者権限を持つ人を必要最小限にすることが重要です。

手順5 離席・交代・終業時の操作を決める

共用端末では、利用者が変わるタイミングを明確にします。

状況実施する操作
短時間の離席Windowsをロックする
次の担当者へ交代業務サービスとWindowsからサインアウトする
終業サインアウトし、ローカル保存ファイルを確認する
長時間不在サインアウトまたは会社指定の停止処理を行う
緊急退席管理者がセッションを停止できるようにする
端末貸出し前利用者のプロファイルやデータを残さない

自動ロック時間は、すべての会社へ共通する法定時間があるわけではありません。

本稿では、受付や一般事務では5分から15分程度を目安にし、顧客情報や重要システムを扱う端末では、業務上支障のない範囲で短く設定することを提案します。

ただし、ロック時間を短くしすぎると、現場がPINを付箋に書いたり、ロック機能を回避したりする可能性があります。業務の流れを確認して決めてください。

手順6 ダウンロード・スキャン・印刷物も分離する

アカウントを分けても、共通フォルダや机上に情報を残せば、次の利用者から見えてしまいます。

確認対象は、ブラウザだけではありません。

  • ダウンロードフォルダ
  • デスクトップ
  • 共通フォルダ
  • スキャンデータの保存先
  • 印刷待ちの帳票
  • 最近使用したファイル
  • PDF編集ソフトの履歴
  • 一時ファイル
  • クリップボード履歴
  • USBメモリ
  • 複合機内に残るジョブ
  • ごみ箱

共用端末では、個人情報や機密情報を端末へ恒久保存せず、アクセス制御されたサーバーやクラウド上へ保存することを基本とします。

ローカル保存が必要な場合は、保存先、保存期間、削除担当者、削除確認方法を決めます。

手順7 個人別の操作ログを確認する

個人別アカウントへ切り替えた後は、実際に個人を識別できるログが残っているかを確認します。

確認したいログ

  • Windowsへのサインイン・サインアウト
  • 業務アプリへのログイン
  • データの閲覧・登録・変更・削除
  • 管理者権限の使用
  • ファイルのダウンロード
  • 共有設定の変更
  • 印刷や出力
  • 認証方法の追加・変更
  • 利用者アカウントの追加・停止
  • ブラウザポリシーの適用状況

個人情報保護委員会は、個人データを扱うシステムの使用状況、アクセス状況、操作内容、成功・失敗の記録を監視し、異常な記録の有無を定期的に確認する方法を挙げています。

ログを取得していても、全員が同じ共有IDで操作していれば、個人別の確認には使えません。

共有IDの解消とログ確認は、同時に進める必要があります。

共有メールアドレスは「共有パスワード」にしない

info@example.jpsupport@example.jpなど、複数人で処理するメールアドレスは必要です。

しかし、共有メールアドレスが必要であることと、全員が同じパスワードでメールボックスへログインすることは別です。

利用しているメールサービスが対応している場合は、次の構成にします。

  • 従業員は自分の個人別アカウントでサインインする
  • 共有メールボックスへの閲覧・送信権限を個人別に付与する
  • 共有アカウントのパスワードを複数人へ配布しない
  • 誰が送信・削除・転送したかを確認できるようにする
  • 異動・退職時は本人の権限だけを削除する

同様に、共有フォルダ、予約管理、SNS、ECサイトについても、可能であれば個人別アカウントと役割権限を使用します。

個人別アカウントを作れないサービスの例外管理

古い業務システムや一部の外部サービスでは、個人別アカウントを作れない場合があります。

この場合、共有IDを直ちにゼロにできないことがあります。

ただし、「システムが対応していないから仕方がない」で終わらせず、例外として管理します。

共有ID例外台帳に記録する項目

項目記録内容
サービス・システム名対象となる業務システム
共有が必要な理由個人別IDを作成できない等
利用者現在使用できる人
業務目的何の作業に使うか
権限閲覧、登録、削除、管理等
認証情報の保管会社指定のパスワード管理方法
MFA認証器の管理者と使用方法
利用記録誰がいつ使ったかを記録する方法
パスワード変更変更条件と最終変更日
退職・異動時利用者削除とパスワード変更
代替計画個人別IDへ移行できる時期
承認者例外を認めた責任者
次回確認日例外継続の必要性を見直す日

共有IDの利用者を減らし、権限を最小限にし、使用のたびに申請または記録を残します。

ただし、別紙へ利用時刻を書くだけでは、システム上の操作と完全に結び付かない場合があります。これは個人別IDの代替としては不完全な方法です。

システム更新や契約更新の際は、個人別アカウント、役割権限、操作ログに対応する製品へ移行できないかを確認します。

前の利用者のログイン画面が残っていた場合

次の担当者が共用端末を使おうとした際、前の利用者のメールや顧客情報が表示されたままになっていることがあります。

この場合、勝手に内容を閲覧したり、前利用者の名前で操作を続けたりしてはいけません。

最初に行うこと

  1. それ以上の操作を止める
  2. 発見日時、端末管理番号、表示されていたサービスを記録する
  3. 必要以上に画面内容を撮影しない
  4. 管理者または責任者へ連絡する
  5. 前利用者のセッションを終了する
  6. クラウド側の有効なセッションも必要に応じて失効させる
  7. ログを確認し、第三者による操作がなかったか調べる
  8. ダウンロード、印刷、共有、転送等の履歴を確認する
  9. 原因となった運用や自動ロック設定を修正する
  10. 対応内容を記録する

顧客情報や従業員情報を、権限のない人が閲覧した可能性がある場合は、単なる「ログアウト忘れ」として終わらせず、情報セキュリティ事故として影響を確認します。

ただし、画面が開いていたという事実だけで、直ちに情報漏えいが発生したと断定することはできません。閲覧・操作の有無、対象情報、利用者の権限、ログ、周囲の状況を確認して判断します。

月1回確認したい共用端末の数字

以下は、本稿で提案する月次確認の例です。

指標確認する意味目指す状態
共用端末数管理対象を把握できているか台帳と現物が一致
個人別OSアカウント対応率共有Windows IDが残っていないか業務端末は原則100%
人が使う共有IDの数個人を特定できない入口がないか原則0
共有管理者アカウント数高権限を共用していないか0
所有者不明のブラウザプロファイル数誰のデータか分からないものがないか0
個人アカウントのブラウザ登録数業務データが個人同期されていないか会社方針に適合
期限超過したローカルプロファイル数退職者等のデータが残っていないか0
サインアウト忘れ件数交代手順が守られているか0
自動ロック未設定端末数離席時に情報が見えないか0
例外共有IDの未確認数例外が恒久化していないか0
ログ取得不能端末数事故時に調査できるか0
管理者権限を持つ一般利用者数過剰権限がないか必要最小限

月1回という確認頻度は、すべての企業へ一律に課される法的義務ではありません。

一般の共用端末は月次、重要な会計・顧客管理端末は利用状況をより短い間隔で確認するなど、業務の重要度に応じて調整してください。

30日で共用PCのアカウントを分離する

期間実施すること完成させるもの
第1週社内の共用PC・タブレットを洗い出す共用端末台帳の初版
第1週Windows、ブラウザ、業務サービスの共有IDを確認する共有ID一覧
第2週重要端末から個人別Windowsアカウントを作る利用者アカウント一覧
第2週標準ユーザーと管理者を分離する管理者アカウント一覧
第3週Chrome・Edgeの会社用プロファイルを設定するブラウザ設定記録
第3週個人アカウントの追加、ゲスト利用、パスワード保存の方針を決めるブラウザ利用ルール
第4週離席、交代、終業時の操作を試す共用端末利用手順
第4週Shared PC、キオスク、例外共有IDの適用を判断する改善計画、例外台帳
第4週操作ログとアカウントを照合する確認記録、証跡

最初からすべての端末を入れ替える必要はありません。

まず、顧客情報、会計、給与、契約、承認などを扱う共用PCから、個人別アカウントへ変更します。

次に、公開端末や専用機器を、キオスクまたは制限付き構成へ分けます。

経営者が確認したい五つの質問

経営者がWindowsやブラウザポリシーの細かな設定を理解する必要はありません。

担当者へ、次の五つを質問してください。

  1. 社内で複数人が使う端末をすべて一覧にできるか
  2. 端末は共用していても、Windowsと業務サービスのIDは個人別になっているか
  3. 誰が顧客情報を閲覧・変更したか、ログから確認できるか
  4. 前の利用者のメールやクラウドが開いたままにならない仕組みがあるか
  5. 個人別IDを作れない共有アカウントについて、利用者、理由、見直し期限を記録しているか

この五つに答えられないからといって、直ちに情報漏えいが発生しているとは限りません。

しかし、共用端末を会社として管理できていない可能性があります。

まとめ

一台のパソコンを複数人で使うことと、一つのIDを複数人で使うことは、同じではありません。

共用端末の基本は、次の順番です。

  1. 共用している端末を一覧にする
  2. 業務内容と扱う情報を確認する
  3. 従業員ごとにOSアカウントを分ける
  4. 業務サービスも個人別アカウントにする
  5. ブラウザプロファイルはOSアカウントの内側で使う
  6. 離席・交代・終業時のサインアウト手順を決める
  7. ダウンロード、印刷、一時ファイルも確認する
  8. 個人別の操作ログを残す
  9. 公開端末はキオスクとして分離する
  10. 共有IDが残る場合は例外台帳で期限付き管理をする

ChromeやEdgeのプロファイルは、履歴やブックマーク等を分けるための便利な機能です。

しかし、同じOSアカウントを使う複数の従業員を、安全に隔離するための本人認証機能ではありません。

最初の一歩として、受付、倉庫、工場、店舗、会議室にある共用端末を一台ずつ確認してください。

そして、次の質問へ答えます。

この端末で問題が起きたとき、会社は実際に操作した人を特定できるか。

答えが「勤務表を見なければ分からない」「全員が同じIDなので分からない」であれば、個人別アカウントへの分離が必要です。

ライトハウスコンサルタントの「中小企業セキュリティ現状診断」では、共用PC、共有アカウント、管理者権限、ブラウザ、クラウドサービス、退職者処理などを含め、現在のアカウント管理状況を整理しています。

「一台ずつ端末を用意する予算はない」「古い業務システムが個人別IDに対応していない」「IT事業者へ何を依頼すればよいか分からない」という場合も、端末を買い替える前に、現在の利用者、アカウント、権限、ログを見える化することが重要です。